為替の落とし穴

FXにはまった個人投資家の失敗

基立高校の教諭を務める佐藤幸助さん(仮名、30歳代後半)は、ギャンブルとは無縁だった。パチンコも競馬もいっさいやらないし、株投資もやったことはない。 だが、FX(外国為替証拠金取引)には心が動いた。

 

昨年1月後半、それまでて100円台で推移した円ドルレートがにわかに円高に動き、105円台に突入すると、「八コの円高は投資のチャンス。やらないと一生後悔する」と感じた。最初は、スワップポイント狙いでドルを買った。スワップポイントとは、金利の低い日本円を売り、金利の高いドルを保有し続けることで手に入る、「金利差の調整分」のことである。

 

約100万円の資金を元手に1000万円分のドルを買ってみた。デビュー戦で、いきなり20万円ほどの利益が出た。その後も、おカネは殖えていった。佐藤さんは、FXにはまった。為替レートの動きが気になってしようがない。教師という立場上、昼間は無理だが、米国の経済指標が発表される22時半(冬時間)以降は、食い入るようにパソコン画面を見つめた。一時就寝、四時半起床という日々が続いた。

 

さらに四月からはテクニカルチャートを頼りに、高いレバレッジの短期売買で利ザヤを狙うスキャルピングを始め、さらにどっぷりとはまり込む。株式でいうデートレードである。9月のリーマンショックでやはり損を吐き出したものの、それでも2008年はトータルで900万円のプラスを確保したが、09年になると、さらに激しい浮き沈みが待っていた。

 

どんと儲けたかと思えば、自動ロスカットを食らうパターンが続いた。ロスカットとはポジションの評価損を反対売買によって強制的に決済する仕組みだ。そして現在、収支は900万円のマイナスである。「夜中、お酒を飲んでチャートを見ていたりすると、気が大きくなって失敗する」と佐藤さん。酔っ払って一日30万円損したこともある。

 

少しずつでも取り返そうと、今もネットパソコンを持ち歩く。FX会社の口座数は09年6月末で241万に上る。口座には重複があるのでFX人口はもっと少ないが、実際に儲かっている人びとはどれぐらいいるか。その数字は明らかにされないが、「収支とんとんであれば、かなり優秀」とは、大手FX会社幹部の言である。顧客の8割が損を出すことを前提としたビジネスモデルになっている会社もある。全体としても、佐藤さんのように負けている投資家はかなりの比率を占めると目される。

コンスタントに勝ち続けるのは無理

外貨投資商品の代表格は、外貨預金、外貨MMF、FXである。このうち外貨預金は、専門家が「手を出すべきではない」と口を揃える商品だが、家計は09年3月までの一年間で外貨預金を4000億円増やしている。金利上積み分など為替変動で吹き飛ぶかなりの高コスト商品だ。1万ドル当たり約2万円の手数料コストがかかる。

 

それに対してFXは10分の1以下とコスト面で優等生なのは間違いない。それでも、継続的に儲けるのは至難の業だ。1日2540億ドルも取引される外国為替市場では、ミリセカンドの超スピードで判断・取引するシステムも参入して、利ザヤ稼ぎのパドルが演じられている。為替レートは常に上下動し、時に為替ディーラーもあわてふためく値動きを見せる。

 

そもそも為替取引は、株式のように期待リターンがプラスの「投資」ではない。「投機」だ。投資した先の企業が稼いでくれれば、投資家全員に利益が回ってくるプラスサムではない。儲けた人の陰には、必ず損した人がいるゼロサムの世界である。

 

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経済成長率の差と為替は連勒しない

では、中長期の投資であれば勝ち目は出てくるか。やはり罠が待ち受けている。高金利通貨建て債券が個人に人気を博し、また自治体や大学、公益法人などが為替仕組商品に駆り立てられる裏には、円相場に関する「大誤解」がある。

 

まずは「日本は少子高齢化で長期にわたって低成長が続く。だから円安になるだろう」という円安信仰は明らかに間違いだ。

 

経済成長率の高い通貨は、成長率の低い通貨に対して本当に上昇するか、検証してみよう。日米の経済成長率の差とドル円の図である。図では日本の実質GDP成長率が米国のそれを上回ればプラス、ドル円相場のほうは年平(前年比)で円高になればプラスだ。

 

結果は見てのとおりだ。成長率格差とドル円相場の変化とのあいだにはまったく連動が見られない。主要通貨について過去10年間の経済成長率と対ドル相場の関係を見ても、パラパラであることに変わりない。もう一つの根強い大誤解かある。「高金利通貨の為替相場は上がる」だ。二つの通貨の金利差が広がるとき、金利が高いほうの為替相場は上昇する。短期的に確かにそういう局面はある。だが、常にそうではない。時として逆の動きをするのである。

 

1985年以来のドル円相場と日米の短期金利差(翌日物)の推移だ。05〜06年は日米金利差が拡大(ドル金利上昇)しドル高となった。また、07年後半からは金利差が縮まってドル安となっている。金利差と為替は関連した動きをしている。しかし、01年は逆の動きだ。80年代後半、90年後半も逆目に動いている。77〜08年の日米の長期金利差は3.1%だった。これは同じ時期の日米インフレ率の差約3%を反映したものだ。一方で、「同じ時期にドル相場は円に対して年率平均3%下落した」。金利差は長期的には為替で帳消しになるのである。

 

 

 

高金利・高インフレは通貨の価値の下落

謎を解くキーマンは、インフレ率(物価上昇率)だ。

 

金利の背景は高インフレがある。高インフレとは、通貨の国内における価値が下落することだ。すると、対外的な価値も下がって為替相場も下落するのである。先ほどの77〜08年で、日米のインフレ率は米国のほうが高く、その差は約3%だった。それが円に対してドルを下落させたというわけだ。長期運用を旨とする機関投資家の運用責任者は言う。「先々に禍根を残さないためには、為替のリスクそのものは取らないのが基本」なのである。

 

市場心理は微妙なところにさしかかっている。今年前半は「リバウンド」というわかりやすい相場テーマがあった。リーマンショック後の異常事態を脱し、各国経済の回復期待とカネ余りによって金融相場が演じられた。資源国、新興国などリスク通貨、株や商品などにも資金が舞い戻り、価格上昇した。

 

『そのラリーが続くか、息切れするか、どちらもありうる』。ささいな材料でリスク資産の反落・調整は起こりうる。8月下旬以降の。唯一の売りはドルという状況が続き、今後もドルの脆弱性に市場の目が向きやすい。さらに「釆年にかけて円にも上昇圧力がかかりやすい」という状態が続く。

 

市場心理は揺れ動き、為替相場は紆余曲折が予想される。波乱がいつ起きてもおかしくはない。「為替」入門とはほかでもない、こうした仕組みと罠の存在を知ることである。わかったう瓦で為替のリスクを取るのはいい。無頓着なまま「知らぬうちに取らされている」のはダメだ。

外国為替市場(FX)の欧州時間は、本邦通貨当局による介入警戒感が根強く残る中、ギリシャの財務相が入院した事や先日の包括支援策に対する国民投票実施で不安感が強まったために、ユーロが下落する動きを強める事となった。また、市場が予想していた通り豪が25Bpの利下げを行ったが、やはりこれが足かせとなった豪ドルも下落する動きを続けたために、市場全般的に主要通貨やそのクロス円通貨が下落する展開となった。特に、欧米の株価が軟調に推移した事もあって、市場では先週までの流れと変わってリスク回避の姿勢を強める事となり、ドル買いと円買いの目立つ動きが続いた。